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メーカー動向

XREAL の軌跡と今後 — 映像視聴系 AR グラスの覇者はどこへ向かうか

旧 Nreal から XREAL へとブランド変更を経て映像視聴系 AR グラスの主要プレイヤーへ成長した XREAL の歴史を、創業背景・製品ラインアップの進化・Beam / Beam Pro エコシステム・日本展開・2026 年以降の見立てまで、公式情報と主要メディアの報道をもとに 2026 年版で整理します。2026 年 4 月時点の現行ラインアップは XREAL One Pro(フラグシップ)と 1S(軽量・コスパ)の 2 機種で、Air 2 Pro / Air 2 / One は前世代として系譜上の節に位置付けられます。

スマグラ Journal 編集部/ 編集部25 分で読める

XREAL(旧 Nreal)は、2017 年に北京で創業して以降、Birdbath 光学系を採用した軽量 AR グラスを次々と投入し、現在では映像視聴系 AR グラス市場の主要プレイヤーと位置付けられる存在になりました。2023 年のブランド名変更(Nreal → XREAL)、自社開発の空間コンピューティングチップ X1 の投入、コンパニオンデバイス Beam / Beam Pro の展開と、節目ごとに自社のポジションを再定義してきた経緯があります。2026 年 4 月時点の現行ラインアップは XREAL One Pro(フラグシップ)と 1S(軽量・コスパ)の 2 機種で、Air 2 Pro / Air 2 / One は前世代に当たる位置付けです。本記事では、XREAL の歩みを公式情報と主要メディアの報道をもとに振り返り、2026 年以降の見立てまでを情報集約として整理します。実機レビューではなく、企業・製品の戦略動向の整理として構成しています。

概要

XREAL は 2017 年 1 月、Magic Leap 出身の Chi Xu(徐驰)氏が北京で創業した中国系 AR グラスメーカーです(XREAL Newsroom, 2023-05-09、2026-04-25 参照)。2019 年の Nreal Light を皮切りに、Nreal Air(2021)、XREAL Air 2 / Pro(2023)、XREAL One / One Pro(2024〜2025)、そして 1S(2026)と、Birdbath 光学系をベースに小型・軽量化と機能拡張を進めてきました。現行ラインアップは One Pro と 1S の 2 機種で、One は値下げ後も併売されてきましたが廃止予定とされ、Air 2 Pro / Air 2 は前世代として整理されます。2024 年末には自社開発の空間コンピューティングチップ「XREAL X1」を One シリーズに搭載し、グラス単体での 3DoF 表示と低遅延処理を実現。コンパニオンデバイスとして Beam / Beam Pro を投入することで、DP Alt Mode 非対応の iPhone(旧モデル)や旧 Android 端末まで対応デバイスを広げてきた点も特徴です(XREAL JP Shop, Beam Pro 製品ページ、2026-04-25 参照)。本記事では、創業から 2026 年 4 月時点の最新動向までを整理し、2027 年以降の見立てを公開情報の範囲で示します。

XREAL の創業と Nreal Light(2019)

XREAL の前身となる Nreal は、2017 年 1 月に北京で設立されました。創業者の Chi Xu 氏は、Magic Leap で AR ハードウェアの開発に従事していた経歴を持ち、退社後に「より軽量で消費者向けの AR グラス」を目指して会社を立ち上げたと伝えられています(TechCrunch, 2019-01-08、2026-04-25 参照)。当時の AR / MR 業界は、Microsoft HoloLens(2016 年発売)と Magic Leap One(2018 年発売)が双璧でしたが、いずれもヘッドマウント型で重量があり、業務利用や開発者向けが中心でした。Nreal はここに「眼鏡形状で持ち歩ける AR」を提示する形で参入したと整理できます。

最初の製品 Nreal Light は、2019 年 1 月の CES で公開されました。重量約 88g、両眼の Birdbath 光学系で 1080p / 視野角 52 度を実現し、6DoF トラッキング用のカメラを内蔵する構成です(The Verge, 2019-01-08、2026-04-25 参照)。発表時点での想定価格は 499 USD と、Magic Leap One(2,295 USD)の 5 分の 1 程度に抑えられていた点が業界に強い印象を与えたとされます。Nreal Light は 2020 年に韓国で先行発売され、その後 2021 年に米国・欧州・日本へ順次展開されました。日本では KDDI が 2020 年 12 月に「au Smart Glass」相当の枠組みで Nreal Light を取り扱った経緯があり、これが後の国内展開の足がかりとなりました(ITmedia Mobile, 2020-12-01、2026-04-25 参照)。

なお Magic Leap は 2020 年に Nreal を「元従業員による技術流用」として米国で提訴しましたが、2020 年 6 月に Nreal 勝訴の判決が下り、2021 年に和解で決着したと報じられています(Reuters, 2020-06-19、2026-04-25 参照)。この訴訟を乗り越えたことが、その後のグローバル展開を可能にしたと見られます。

製品ラインアップの進化

Nreal / XREAL の製品ラインアップは、おおよそ次のように世代を重ねてきたと整理できます(参照日: 2026-04-25)。

この流れから読み取れるのは、XREAL が「Light の汎用 AR」から、エンタメに振り切った「Air 系列」、そして本体内蔵チップで再び空間 UI を取り戻す「One 系列」へと、3 つの世代に分けて方向性を切り替えてきた点です。Air 系列で量産規模を確保しつつ収益化し、その原資で X1 チップ開発と One シリーズへ進化させ、現行の One Pro(フラグシップ)と 1S(軽量・コスパ)の 2 機種体制 に到達した、と段階的な構成として整理できます。次世代については、Bloomberg が「XREAL は両眼 6DoF 対応の次期モデルを 2026 年内にも発表する見通し」と報じていますが、編集部としてはあくまで観測情報として扱います(Bloomberg, 2025-12-08、2026-04-25 参照)。

XREAL の競争優位

映像視聴系 AR グラスは、VITURE、Rokid、TCL RayNeo、Lenovo Legion Glasses など競合プレイヤーが増えた領域です。その中で XREAL が現時点で築いている競争優位は、おおよそ次の 4 点に整理できると見られます(参照日: 2026-04-25)。

第一に Birdbath 光学の作り込み です。XREAL は Sony Semiconductor Solutions 製の Micro-OLED パネルと、自社設計の Birdbath 光学系を組み合わせ、前世代の Air 2 Pro で 75g、One で約 84〜88g(メディア計測値)、そして現行の One Pro / 1S にかけて軽量化と視野角拡張の両立を進めてきました(Engadget Japan, 2024-12-24、2026-04-25 参照)。Birdbath は導波路(Waveguide)方式に比べて見え方が安定し、輝度・色再現で有利という特徴を持ち、映像視聴用途には適した方式とされます。

第二に X1 チップの存在 です。2024 年 12 月の One 発売とともに投入された XREAL X1 は、3DoF Spatial 表示・低遅延(公称 3ms)処理・色補正・歪み補正をグラス単体で完結させるための専用 SoC で、現行の One Pro / 1S にも継承されています。競合の VITURE Pro / Rokid AR Studio が依然としてホスト側 SoC に多くを依存している現状に対し、ハードウェア差別化の柱になっていると整理できます(XREAL Newsroom, 2024-12、2026-04-25 参照)。

第三に Beam / Beam Pro エコシステム です。後述するように、DP Alt Mode 非対応のスマートフォンや旧端末でも XREAL のグラスを使えるようにする補完的なハードウェアを揃えており、対応デバイスの幅広さは XREAL の強みとして挙げられます。

第四に 対応デバイスの広さ です。XREAL のグラスは PC(Windows / macOS)、Android スマートフォン、iPhone(USB-C 化以降)、Nintendo Switch、Steam Deck、PlayStation 5(HDMI 変換経由)、Xbox Series X|S(同上)など、主要なエンタメ機器に幅広く接続できます(XREAL JP Shop, 互換性ページ、2026-04-25 参照)。これにより「グラス 1 台でほぼあらゆる映像ソースを大画面化できる」体験が成立しており、用途の汎用性そのものが訴求点になっています。

Beam / Beam Pro の戦略的意味

XREAL の戦略を読み解く上で見逃せないのが、コンパニオンデバイス Beam / Beam Pro の存在です。Beam は 2023 年 6 月に発表された外付けの小型計算ボックスで、DP Alt Mode 非対応のデバイスからの映像を Wi-Fi / 有線で受け取り、グラス側に転送する役割を担います。さらにアンカー固定(Body Anchor / Sideview / Smooth Follow)の処理を担当し、グラス側で再生する動画の表示モードを制御する機能も提供します(XREAL Newsroom, 2023-06-13、2026-04-25 参照)。

Beam Pro は 2024 年 6 月に発表された後継機で、Android ベースの独立した端末として位置付けられました。本体に Snapdragon Spatial Companion Processor 相当のチップを搭載し、Spatial 写真・動画の撮影機能(左右 50mm 離れた 2 つのカメラ)、Google Play 互換のアプリストア、最大 6 時間のバッテリーを備えるとされます(The Verge, 2024-06-26、2026-04-25 参照)。日本国内では税込 5 万 9980 円で展開されています(XREAL JP Shop, Beam Pro 製品ページ、2026-04-25 参照)。

Beam / Beam Pro が戦略的に重要なのは、「DP Alt Mode に頼らないコンパニオンデバイス」 という設計思想です。多くの映像視聴系 AR グラスは USB-C 経由の DP Alt Mode を前提に動作しますが、iPhone(USB-C 以前)や一部の廉価 Android 端末はこの仕様を備えていません。Beam を介在させることで、XREAL のグラスは事実上ほぼあらゆる映像ソースに対応できる構造になります。スマートフォン側のハードウェア仕様に依存しないので、エコシステムの裾野を広げられる点が、競合に対する差別化要素として機能していると見られます。

加えて Beam Pro は単なる中継機に留まらず、「Android アプリを動かせる小型端末」 としてグラス専用の用途を作り出す役割も担います。Spatial 動画の撮影と XREAL One Pro / 1S での再生をワンセットで提供することで、XREAL は「グラスとコンパニオンを束ねた体験」を訴求できる構造を取っており、ハードウェア単体の比較から少し離れた位置にいる、と整理できます。

日本展開

XREAL の日本展開は、映像視聴系 AR グラスの中でも先行している方と位置付けられます。2020 年の Nreal Light(au 経由)、2021 年の Nreal Air(家電量販店流通)、2023 年の XREAL Air 2 / Pro、2024〜2025 年の XREAL One / One Pro、そして 2026 年の 1S と、毎世代を国内市場に投入してきました。現行ラインアップは One Pro / 1S の 2 機種で、One は廃止予定として併売・前世代の Air 2 / Air 2 Pro は系譜上の節という立て付けです。日本法人 XREAL Japan も設置されており、サポートと販売体制が確立されている点は、同等価格帯の競合(VITURE / Rokid)と比べても利点として指摘されることが多い状況です(ASCII.jp, 2024-01-15、2026-04-25 参照)。

国内流通の中心は、ヨドバシカメラ・ビックカメラ・ヤマダ電機などの家電量販店と、Amazon.co.jp、公式オンラインストア(jp.shop.xreal.com)です。家電量販店の店頭で実機の試用ができる店舗もあり、購入前に視野角や装着感を確認できる導線が整いつつある点は、国内のスマートグラス市場全体で見ても XREAL の特徴的なポジションと言えます。

価格戦略としては、現行の One Pro が税込 8 万 4980 円(フラグシップ)1S が米国で 449 USD(軽量・コスパ枠) という上下 2 階建ての構成に整理されています(XREAL US Shop, One Pro 製品ページXREAL US Shop, 1S 製品ページ、2026-04-25 参照)。前世代の XREAL One は当初 6 万 9980 円から 6 万 2980 円へ値下げされた上で廃止予定として併売されており、Air 2 Pro(税込 6 万 9980 円)も流通在庫として残っています。家電量販店の通常販促や Amazon のセール時には、前世代モデルが 5 万円台前半まで実売価格が下がるケースもあると報じられており、現行 One Pro / 1S と前世代モデルの併売で広い価格帯をカバーする形で、競合(VITURE Pro 7 万 4880 円)と比べても価格優位を維持していると整理できます(価格.com 掲載のニュース、2026-04-25 参照)。

2026 年以降の見立て

公開情報から見えてくる 2026 年以降の業界動向と、XREAL のポジションについては、次のように整理できます(参照日: 2026-04-25。推測を含む点は明示します)。

第一に Apple / Meta との競合 です。Bloomberg は Apple が 2027 年以降に軽量眼鏡型デバイスの投入を計画していると報じており(Bloomberg, 2025-11-10、2026-04-25 参照)、Meta も 2025 年に Meta Ray-Ban Display で片眼ディスプレイ付きグラスを 799 USD で投入しています(Meta Quest Blog, 2025-09、2026-04-25 参照)。両社は AI / 通知体験を中心に据えるオーディオ + AI 寄り、もしくは導波路ベースの軽量 AR を狙っており、XREAL が強い「Birdbath による高解像度映像視聴」とは当面は別カテゴリとして併存すると見られますが、ユーザの「眼鏡型ディスプレイ」予算を奪い合う構図にはなり得ます。

第二に コモディティ化の可能性 です。中国国内では VITURE、Rokid、TCL RayNeo、Lenovo Legion Glasses など Birdbath 系の競合が増加しており、Sony Semiconductor Solutions 製 Micro-OLED の供給という共通サプライチェーンの上で各社が差別化を図る構図になっています。X1 のような専用チップやアクセサリ群、ブランド・流通網の強さが今後どこまで効くかが、XREAL のシェア維持を左右すると見られます。

第三に エンタープライズ参入の観測 です。XREAL は 2025 年に「XREAL Enterprise」や「XREAL Pro Series」など法人向け取り組みを示唆する発表を行ったと報じられており、業務利用(遠隔支援・教育・トレーニング)への参入が今後本格化する可能性があります(Road to VR, 2025-09-15、2026-04-25 参照)。Magic Leap や HoloLens が後退した B2B 領域に、軽量 Birdbath で参入する余地はあると整理できますが、業務向けは導波路系の透過率や調光が重視されるため、Birdbath ベースのままどこまで通用するかは未確認です。

第四に OS / プラットフォーム戦略 です。Google が 2025 年に Android XR を発表し、Samsung・Warby Parker と連携した次世代スマートグラス開発を進めています(Google Blog, 2025-05、2026-04-25 参照)。XREAL がこのエコシステムにどう接続するか(Android XR 対応端末を出すか、独自路線を継続するか)も、2026 年以降の戦略を読み解くポイントになると見られます。

これらは業界報道や XREAL 公式の発表から推測される方向性であり、断定的な予測ではない点に留意が必要です。

まとめ

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